今日も晩酌は缶チューハイ。
カシュっと心地よい音が、私の耳を潤してくれる。
そこから一口、もう一口と進むごとに、舌と喉も潤し始める。
買ったばかりの座椅子に背中を預けて、今日も某動画サイトを垂れ流す夜を過ごす私は、もう28かぁ…。
きっと二十歳の私なら、「あぁ、だれかいないかなぁ」なんて思っていたのかもしれない。けど、けどもね、28にもなるとね、「あ、一人楽。もう一人でいいやぁ」と、諦めでもない境地に達してしまったんですね、これがね。だからこそ、下着姿でダラダラしても居られるというもの。いえぁライフイズビューティフル。
おうおうどうした私。「ハハ」なんて乾いた笑いを出して。もう一口行こうぜ。
…なんて、鼓舞する自分を鏡で見たら、きっと辛くなるなぁ。なんて思っていたんです。
その矢先、たまたま自動再生で流れてきたのは、最近流行りのキャラクターアバターでのゲーム配信動画だ。いわゆる『VTuber』というもの。
改めてみると、いろんな人が居るもんだ。かわいいキャラやかっこいいキャラ。ロボットや戦隊ヒーローみたいな見た目な人もいっぱい居る。
いやぁけど、中にはリアルな人も居るなぁ。この子なんてカワイイし。見た目幼い女の子だけども、青い髪でキレイな袴…。
「…ん、あれ、この子。というか、この袴の柄。どっかで…」
はて。
お酒が回ってるからか、なんかぼんやりする。
けど最近なんか、どこかで見た…気が………あ。
思い出した。
と同時に、四つん這いになりながら、カバンの中からスマホを取り出す。
「たしか…昨日のメールで……あ、やっぱり、あった。これだ。」
ぼんやりしていたのも当然。
『見た写真がぼやけていた』からだった。
昨日の投稿写真でみつけた、空飛ぶ女の子。
オカルトは私の部署じゃないからスルーしてたんだけど、やっぱりこれだ。
日の入りの暗がりの中、たまたま空を移したら、画面端にちらっと移った女の子のシルエット
その女の子が着ていたであろう袴のようなロングスカートの服。
手振れに加えて、対象が動いていたからか、ぼやけてしまってはいるのだけども、それでもわかる特徴的な模様は、ノートパソコンの画面に映るその子のものと、一緒ではないかと思えた。
思った瞬間、私の指は正確にスマホを操作し、編集長へ電話をかけていた。
「あ、編集長。お疲れ様です。雛岸です。夜分遅くにすいません、昨日届いた投稿写真の、えぇあれです。私、あれちょっと追ってもいいですか。えぇ、大丈夫です。来週までの原稿もう作ってサーバーに置いときましたから。それもやりました終わってます。えぇそれも終わってます。それも全部、今日終わりました。だからちょっと明日から時間貰いますね。いいですね。
え、理由ですか。そりゃもちろん、
面白そうだからに決まってるじゃないですか。
」
電話を切った後の私の顔は、きっと写真映えしていたのではないかってくらい、いい顔してるんじゃないか。
覇気のない上司とは違うのだと、日々のうっ憤とともに缶チューハイを飲み込んだ。
「っぷあぁ。ええっと……『山伏』、かぁ。」
28歳の夜。
パソコンの画面から、部屋の棚の飾りになっていた一眼レフを見た。
そして私は一人静かに、血を滾らせる。