後日談。というもので。


私だけの見出し、にしたかったんだけども、編集長から「そんな数日も休んどいて書かないのはダァメ」とのお告げが下り、二度目の朝日を私は拝むことになった。


とはいえ、内容はかなりかいつまんでいるし、「嘘は言ってない」けど「すべては語らず」というスタンスの元、まぁまぁ見開き2ページ分の大作に仕上がった。

出版された日に山長からチャットが届き、「みたよぉ〜!!!すんごいいじゃん〜!!」と、アレがだめとかコレは出しちゃいけないとかもなく、どちらかと云えば岩木山周辺の歴史を取り上げてくれたことによる『感謝」を頂いたのだ。

それもあいまってか、意外と反響があった様子で、売り上げもここ数年で見ても非常にいいほうだったそうだ。第二弾はまだかという声も届いていたり。


「もうわかってるとは思うけども、あの人はそんな人よね〜」

ソファーでくつろぐTシャツ一枚の女子(?)は、相変わらずタブレットでYouTubeを眺めていた。画面の中には見覚えのある少女、それこそ今回の発端となった「空飛ぶ少女」が写っていた。

「まごちん〜、私もこの海のゲームやりたい〜、いっしょにやろぉ〜おねが〜い〜〜」

「その前にパソコンから買わなきゃでしょ。ゲーム機とかよりそっちのほうが使いそうだし」


そういうと信政公は眼を見開いて、ガバっと起き上がった。


「出陣ジャー!!!!馬を出せー!!!!」


結局、信政ことエセJKのまのまは、私の部屋に居ついた。

幸い部屋も余ってるし、今回のこともあったしと、いろいろな理由を取り繕うくらいの理由はあった。

それに彼女自身、たまに図書館司書さんのお手伝いをしているらしく、食費や光熱費など、ノシまでつけてしっかりと毎月出してくれる。その辺は元々が上に立つ人格でもあったことから、かなりしっかりとしていた。

何なら、私より今は潤沢なのでは、と思うくらいに。


「それゆえ、パソコンとやらも自分で買うのーだー」

「買うのはいいけども、最近スマホ買ったばっかりじゃん。タブレットだってついてきたし。」

「あれはあれで使うの。それにタブレットだと立ち絵出せないし」

・・・立ち絵?

まさか。

「え、まさか何、あんたもその、配信?ってのやるの…?」

恐る恐るそう聞くと、「イエィ☆」と助手席の信政公が反応した。ご丁寧にピースマーク付きで。

これは、すでにやってるな…。


結局昼から出たというのに、信政公が求めたスペックのPCを求めて青森市まで行くハメになった。夕方に帰ってきてからというもの、信政公はずっと買ったPCと向かって、アーデモナイコーデモナイとうなっていた。

が、いつしか彼女のPCから聞き覚えのある声がした。

ワイワイとにぎやかな彼女のディスプレイを覗いてみると、予想通りの人物が写っていた。

「あ、コウちゃん元気〜?

 よかったーちゃんと動いてるみたいだし、これでいろいろできるね〜。てか、とってもすごいPC買ったねー!!!いいなぁ…。」

「もう、時間あるときでいいですからね。どうせあなた、無理しちゃうんですからー」

談笑にぎやかではあるが、山長と話すときの信政公は、いつもと違って敬語になっている。緊張しているというよりは、さすがに目上というか、やはりその辺はしっかりとしているようだ。

「また子供たちに怒られるからね。とりあえず出来たら送るから待っててねー!じゃねー!」

山長がそういうと、通話が終了したようだった。

「え、何、依頼って」

「フフフフ。フフフフフ」

え、なに怖い。笑い方怖い。


そんな感じで、私にとっての不思議体験ならぬ、非日常は、いともたやすく日常化した。

というより、もともとおばあ様が関わっていた時点で、こうなることが決まっていたのかもしれないけども…。

いや、実害が出てるわけじゃないし、何なら私の仕事的にも充実するだろうしってのは間違いないのだけども…。

いっそのこと、私のおばあ様の過去を探るのもありなのかなって思いつつ、PCの前でなんかポージングを取っている信政公を眺めつつ、私はエアコンの効いた部屋でくつろぐのであった。

次の見出しは何にしようかとも、考えつつも。












「で、本当のところ、どうしてなんです?」

平日の昼。

露の魔女からの依頼を終わらせた私は、パソコンの向こうに居る山長に問いかけた。

「まぁ…本当に鶴葉の写真は【きっかけ】にすぎなかったのよ。もともと時期が来たら貴女とも会わせて、かつ吉川さんの遺言の通り、コウちゃんを跡継ぎにするつもり、ではあったのよ。」

「やっぱり、そうでしたか。確かに素質は十二分あるでしょうね。何なら私が師事を受けた人よりも、それこそよっぴーよりも。」

「そうねぇ。だって、一度亡くなった体を、その家計の人間が無意識に再受肉させるなんて。それもたった10年のうちに、無意識下で。」

「まごちんも全く気付いてないだろうし、よっぴーが生前なにか残したわけでも無いし。よっぴーが亡くなった時点で私も同時に還ったはずでしたから。」


まごちんが子供の頃、よっぴーに高照まで連れられてきた時だ。

あの時に私と縁がつながったからこそ、あの日、私の誕生日たる7/18に再び訪れた高照で、私は再受肉した。

これで私はまた次の時まで、あの山の八百万となる願いを絶たれた。


「ま、これからは私が一緒にいますから。数年後に例えまごちんが結婚して子供を産んだとしても、私はあの子から離れることはないでしょう。次の時までは。」

「そうね…。貴女も大変ねぇ。」

「山長のあなたほどじゃないですから。保険をかけるために、わざわざあの図書館まで言って、山伏を巡り合わせるなんて。だってまごちんが今回動き始めた時点で『高照に行って私が再受肉する』なんて、貴女以外誰も先読みできませんよ。」

「あらぁ、そうかしら、ふふ。」

「ぜったいそうですって。そのあとの動きも何もかも。まったくあなたもほんと変わらず、苦労人のままなんですから。」

「いいのよいいのよ。そのたびに子供らに怒られてるのだから」


それがうれしくてやってる、と云っても過言ではないのかもだけども。

どこまで先を考えているのか、はたまた『たまたま』なのか、その状況になってから考えているのか。何度死に戻っても、この人の思考にはきっと追いつけないのだろうけども。


そういえば、こうやって見守ることが私の生業だと不卯も言ってた。

あの子こそ純然たる人だったというのに、私よりも人を見る目が肥えていた。


みてよ不卯。

私は今、吉川の跡継ぎと一緒なんだ。

それにほら、結局不卯の言ってた通だよ。

私は繋ぎ橋の役目から上がれず、森羅万象を享受しつつも八百万には入らずに、吉川の行く末を見守ってるの。


そう、それでいいのよね。



こうして山伏山長とは、私自身の立ち絵とlive2Dの話をして、いつしかまごちんが帰ってくる。

今晩は白姫様から頂いた素麺が晩御飯だ。

ありがたく頂きつつ、いったんはこの物語を締めくくるのである。












マエ