2.



なんか、いる。居間の炬燵にいる。

白い何か。某神。

見るからにしょぼくれている。てか、溶けている。炬燵に顔面を半分溶かした状態。

なんか視線の焦点が合ってない。


…あかんこれ、近寄らんとこ、これ。


私と蛇の直感が言っている。

危うきものに近寄らない。

触らぬ神になんとやら。


そうと決まれば善は急げ。私はここから引き返し、たいのだけど。

不幸にも、私のスマホは台所にある。お茶コーナーの棚に、鎮座しておる。そう、置き忘れであぁる。

きっと日課の周回が終わり、リザルトが表示されているはずである。しかしこのままでは周回が、箱がたりぬ。ゆえ、取りに行きたい。


決意し、ガラス戸ををそっと閉じて、中心の炬燵を迂回するようにキッチンへ足を運ぶ。

本来なら廊下からも行けるのだけども、丁度最近、カッシャマのケツがぶつかったせいだった。ケツで壊れて扉があかない。

危険ではあるが、意を決する。

対象ホワイトに接触しないよう、かつ視界にも入らないように、すり足、忍び足、しっぽに少し重心を載せて…足を浮かすよう…音を消しながら………「びゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」「あああああああああ!」


びっくりしてこちらも叫ぶ。

サイレンか。何もかも絶望か。


「うるさ、ちょ、なに……えぇ…」


目の前の白い溶けたナニカが突然慟哭する。いや、嗚咽。

そして、もうなんか涙なのか鼻水なのか、最早わからんくらいのものを周りにまき散らす。もちろん私の部屋着にも飛び散っている。神様の生水…っていえばご利益あるかもだけども、鼻水性の粘液で見た目も感触も悪いし、洗濯決定であれ。

…と、ここで私は思わずも、脊髄反射的に、若干どころかさすがに引く。

えぇ…って、ほんと引いた。


しかし、尋常ならぬ神の姿に、引くを通り越して少々心配になってきてしまった。

とりあえず台所に行った私は、暖かいお茶を淹れる。


「なんなんもう、ほら…」


いつもなら嫌がらせのごとく、この時期には合わない激冷えにするところ。

けれどもさすがに、目の前のナリを見て気が引けたので、適温の一杯とした。



「…あ”っだがい”よ”ぉ”…」


なんて声出しとるんよこの神。


私が目の前にいるというのに、もう何も気にせずというか、らしくもなくというか。

差し出したお茶を一気に、ズビビビと音を立てながら飲み切る。

その効能があってか、嗚咽から鼻をすするくらいには回復したようだった。


「ど、どうしたん…黒いヒトと喧嘩でもしたん…?」


首をぶんぶんと横に振る。そのたびにまた水っぽい何かが飛んでくるが、私はもうあきらめの境地でいる。洗えばいい。

が、どいうやら最愛の人とのけんかはないらしい。

そうでもないとこんな姿は見たことがないのだけど、果たしてそれを私が聞くのもなぁ…。

てか、ここまでだとカッシャマの出番では???と思うのだけども、今日はたまたま私しかいない。

姉弟の部屋からは音もなく気配もないため、今日はほんとに私しかって時に、こんの神よぉ…と普段なら思うところ。

しかし流石に、この様子からは…しのびないというか、なんというか…。


「ま、まぁ…落ち着くまでゆっくりしてっていいから。今日私しか居ないし、ポチポチ周回するくらいだし」「クゥがね…」


クゥ?

あぁ。図書館の館長さん。私は直接話したことないけど。

たしかとんでもない人ってか、天使?

この白い泣きじゃぐった神様と同レベルで、アレな人なんよね、確かカッシャマが言ってた。

あと、その人がおらんと露の魔女さんがーとか、どうこうだから、いないといけないとかなんとか。













「クゥがね…いなくなるのよさ…」











カッシャマー。かえってこーい。

これは私案件じゃなーい。













マエ ツギ