岩木山から街までを2往復する。
・・・というのは、さすがに疲れるため、一度私の居城(1ルーム月28,000円アパート)へ戻った。
戻ったのはいいのだけども、値上げした電気料金の請求やら、カード利用額明細やらと、月一恒例の見たくない書類が、ドアの郵便受けに挟まっていた。
さっきまであった高揚感、未知への昂ぶり、見えない真実への興奮。
これらが一気に、「現実」に上書きされていく感覚だった。
「はぁ」
と、ため息がこぼれたが、これも、きしむドアの音で掻き消された。
シャワー上がりの私は、下着姿のまま、冷蔵庫に冷やしていた缶チューハイを取り出す。
9%。
現実に戻された私を、また向こうへ引き戻すのは、この数字だと思った。
ええ、根拠はない。
ただただそういう気分なだけ。
カシュ。
っといい音がした。
違う意味での高揚感を、私は喉から迎え入れる。
多少の虚無感を伴うことは、眼をつむりたい。
そのまま何気なくテレビをつけると、『津軽信政』についての歴史ドキュメンタリーが流れていた。地元のローカル番組ではあるが、私にとっては「いい勉強」になるのだ。
薄い26インチの向こうで、私と同じくらいの歳だけども、私よりもいいリップを使ってそうなキャスターさんが言う。
「今から約350年前、この津軽地方の4代目藩主として有名な津軽信政は、鶴の前橋がある津軽富士見湖を建造した人として有名ですね。」
そう。
奇遇にも、私が今日散策し、取材し、あの体験をした場所だ。
「大飢饉や家中騒動など、晩年は困難も多いその人ですが、津軽弘前の全盛期を築くなど、尊敬されることも非常に多かったようですね。
没後は遺言によって、岩木山の麓にある『高照神社』に祀られました。」
ん、高照神社、かぁ。
子供の頃に宝物展を見に行ったっきり、しばらく行ってないなぁ・・・。
思えば、子供のころからソウイウの好きだったなぁ。
古いものや寺、神社、宝物、神域とされる場所。
いわゆる、パワースポットなんて呼ばれるような場所へ、おばあさまによく連れて行ってもらったなぁ。
行く先々で、おばあさまはよく言ったものだ。
「意外と、見てるもンは合ってらね。見えねことねぇ。」
良く、見えないものもある、とか、真実は見えない、とかいうけども。
あるって認識したら見えるし、真実だって理解できれば見えるものだと、私は思っている。
そういえば。
高照神社に行ったときは、いつもと違って、こう付け加えられたっけ。
「思い出したら、行って見るもんだ」
・・・明日、十六夜さんのところに行く前に、ちょっと行って見ようかな。
気が付くと私は、左手に9%は持ったままだが、右手のスマートフォンで明日の移動ルートを考えていた。
ほら、高揚感が戻る数字だったじゃないか。