「な〜んだ〜、よっぴーのお孫さんだったんじゃーん!」
注意。
助手席ではしゃぐ女の子こと、「のまのま」が言うよっぴーとは、私のおばあさまのことである。苗字が吉川だから、よっぴー。
奇しくも、私の高校自体のあだ名と同じであった。
「よっぴー…かぁ」
どうせ時間は有り余って暇だし。
と言うこの女の子は、半ば強引に私の車に乗り込んできたのだ。
神社の入口で「ババヘラアイス」を買い、おいしそうに私の隣でほおばっている。
なお、私のおごり。
てか、ババヘラアイスなんて久々に見た。どっちかというと、岩木山アイスという名のほうが、私にはなじみが深い。よく、おばあさまにも、神社帰りとか、夏祭りとか、事あるごとにねだってたっけ。
もう、何年も口にしてない。
・・・おばあさまとも仲が良かった、んだろうなぁ。
ただ、こんな女の子と仲が良かったなんて、まったく聞いたことはなかった。
よくよく思い返すと、おばあさまはよく時間があると、「高照様に御顔出してくる」と言っていた気もする。
おそらくは、「のまのま」こと「津軽信政公」と会っていたのだろう。
「きゃー、この車って、ほんとヤバ。めっちゃ早い。けどあれなんでしょ、免許だっけ、免状だっけ、が必要なんでしょ??」
そもそもこの女の子。
本当に「津軽信政公」とするのであれば、当然ながらいろいろつじつまが合わない。
百歩譲って、実は女性だったいうのは許容しよう。
けれども、1700年代には死没している当人が、どういうわけで若い姿で、約300年後の現代に居るのだろうか。
「ねぇ、聞きたいのだけども」
「お、よっぴー孫ちゃん、なんじゃなんじゃ?」
「貴女って、その・・・…幽霊なの?」
そう尋ねると、彼女は大笑いしながら、助手席のダッシュボードにパシパシと手を当てる。
「血筋だなぁ、よっぴー同じこと聞いてる(笑)
んとね、そうだなぁ。どう説明したもんかなー…たとえばさ・・・」
目的地に着くまでの約30分。
私は岩木山の環状線をゆったりと運転しながら、彼女の話を聞いた。
要約するとこうだ。
一か八か、倒れた枝に描かれていた紙の文字が『生き返る』だった。
らしい。
「私自身、そーーーーんな、大したことしてないんだけどさ。不死身湖。今は富士見湖っていうんだっけ。あそこ作ったのが点数良かったのか、ワンチャンもらったのだ〜。」
「・・・ええっと、あの・・・」
「あ、めんごめんご、そりゃ突拍子もないよね!!!今のよっぴー孫ちんにはいっても伝わるかなって思ったんだよね!」
これも百歩譲って、いや千歩譲って二歩下がったとして、ここ数日のことを思い返すと、まぁ納得できないわけではない、が…。
「ほんとは、今でいうビーチ作りたかっただけなんだよね…。ほらここ、御山はあるけど、海まで街道通っていくのも、ちょーっと遠いじゃん??」
「ま、まぁ、車で鯵ヶ沢まで、40分、くらいかな…。」
「だしょー???
だいたいあの頃なんて、オッサン二人がかごもって運ぶんだし、てか私、こっそり抜け出して遊べなかったし!!
もちろん、田畑農作のためっていう大前提はあったけどもさ。
それに、チャンシロのためにも必要だと思ったシー。」
「チャンシロ…?」
「え、会ってるよ、孫ちん。屏風の麓、富士見湖で。」
シロ…白・・・富士見湖……………あ、あの女の子か。
気づいたところで、私の運転する車は、目的地に到着した。
なんだか、つながっている。
ここ数日の出来事がすべて。
まるで誰かが、私に知らせようとしているんじゃないかって、錯覚するくらいに。
・・・そんなわけないよね、と一息ついて改めて助手席を見ると、「津軽信政公」は、私の顔を見て、満面の笑みを浮かべていた。
「まごちん、アイス食べる?」
「…たべる」
そんなわけ、ない、のだろうか。
伏水の溜め底見ゆるまで。それな奇魂は現世に留り。
地母写し水面。三ツ山の頂を観得り。
常世からの言伝は、時と場所が変わればきっと、西洋にあったかの神子にもあたるのだろう。
そう考えると私も確かに、熊の方の連なりに、とは間違ってはいないのだろうけども。
私の身で熊の方相手には、とても云えたものではない。
きっとあの人であれば、受け入れるのだろうけども。
元来、わたしは願いを与える側ではないのだから。
叶える側の人間で、既に叶い続けている牢獄。
私は相応しくは。と自覚はしている。
あぁ、だからこそなのかもしれない。
だからこそ不卯の得翼は、火鶴への願いへ、私にはできない与える側としてなのか。
・・・いや、白姫も熊の方も、云わずであれば、きっと違うのかもしれない。。
そうあってほしい、私の叶わぬ牢獄か。
それにしてもよっぴーのお孫さんにも巡り合えるなんて。
これに関しては、本当に白姫はどこまで観得ているのか。
熊の方と、どこまでやるつもりなのか。
ふふ、折角だから私はお孫さんの側についてみましょう。
こんな楽しいのは、不卯との遊山以来ね。