「ちがうんです!!!」
そんな半べそで顔真っ赤にしなくとも大丈夫ですって、と言っても謝る子供をあやす、子供…?
いやぁそうなんですよ、私と並んでもそんなタッパ変わらんとですよ。
そんなしっかりしているようで、照れ隠しも何もないだろうってくらい謝り続けている目の前の女の子が誰って?
巫女服で黒髪ショートヘアーのどこかの神様に似ている女の子が誰って?
きっと冬萌ちゃんと遊びに来たシロ様についてきて、春のぽかぽか陽気が気持ちよかったからか、窓際の座椅子でくつろいでいるかわいい女の子が誰だって?
「本当に違うんです、寝ぼけてただけで、ほんとお母さんと間違えるなんてそんな本当に違うんです!!」
というのが5分前。
「おちついた?」
「は、はいー…」
あったかいお茶をすすりながら、きっとこの子は5分前の慌てっぷりを反省しているんだろう。
そんな気にしなくていいのに。と言っても、当人はそうでもないんだろうなぁ。
「あの、お姉さん」
「はいおねえさんですよ!」あちがった「あ、ど、どうしたの?」
ついつい漏れてナニかは置いておいて。
「前からちょっと聞いてみたかったんですけども…。お姉さんって、もともとは山伏じゃないん、ですよね?」
なんか久々にそれ聞いたなぁ。というか聞かれた。
「そうですそうです。もともとはただの女の子でした。」
「やっぱりそうなんですね…。お父さんから聞いてはいたんですけども…。」
うーん、とお茶をすすって考え込む女の子。
お茶請けにとっても合う(なんならお酒にもあう)濡れ煎餅が目の前にあるというのに、それにも目をくれないなんて。
じゃぁ私が食べちゃいましょう、そして冷蔵庫からキンキンに冷やした麦の缶を持ってk「あの!」
「お、おお、ど、どうしたの?」
女の子の声に気おされた私は、立ちかけた膝をまたたたむ。
すこしバツが悪そうにしている女の子に、私は、おねえちゃんは何を言われてしまうんでしょうかーなんて期待も、無きにしも非ずですが。
覚悟が決まったのか、女の子はついぞ口を開けて、私に問いかけた。
「おねえさん、なんでお母さんに似てるんですか!?!?」
「え!?!?!」
「あのだって、さっき私寝ぼけたときに正直ほんとうに『あ、おかあさんだ』って油断しちゃったんです!!」
「え、あ、はい、どうも!!??」
「今は山伏の御方ですけども、もともと人だったって聞いて!!」
「あ、はいそうです!!!」
「けども親戚とかそういうのでもないというか、そもそもお父さんの方ならわからんでもないですがお母さんの親戚とかはそりゃおりませんしというか神様ですし!!」
「そうですね、そりゃそうですね!?!?」
「けどやっぱりなんか!!」
まくしたてるような勢いに気おされて、私も変な回答になっていたが、女の子は一泊置いて追撃した。
「やっぱり似てるんです、お母さんに。」
その後。
帰り際のシロ様にちょっと聞いてみたのですけども。
「たずはっちと私?
そうだねー、なんか似てるよね。ふふ。」
と誤魔化されてしまった。
はは様が言っていたのだけども、シロさまが「あんなかんじに」誤魔化すなり言いくるめるときは、こっちが考えていることは6割は合っているそうです。
女の子改め、ちぃちゃんと私とで出した結論は、『服装』と『体格』と『あほげ』という、『外見的な要素がたまたま似ていたから』ということになりました。
いや、そういうことにしたんです。
だってちぃちゃん曰く「眼を閉じたときの気配」というものが、似ているそうです。
たしかちぃちゃん、ああ見えて剣豪並みの刀使いだったはず。そんなちぃちゃんが、気配で相手をとらえる剣豪が、本物の神様の子供である女の子がそいう言うのが、なんだかとても怖くなったんです。
だから、二人をお見送りした後に、つい妹に聞いてしまったんですよ。
「冬萌ちゃん冬萌ちゃん」
「はいはいあおねえちゃん?」
「私とシロ様って、似てる?」
同じような質問を投げかける。ん〜〜〜〜〜って一小節ほど悩んだ結果に出たのが「若干」だった。
「まぁ服だってそうだし体格だってそうだしアホ毛だってそうだけど、んー、私は雪輪おねえちゃんやカッシャマほど察するとかたどるとか、なんかそういうの全然わかんないんだけども…。」
「性格はぜーんぜん。これでもシロさんとはなんだかんだ長い付き合いだけどさ、お姉ちゃんとは、やっぱ違うと思う。それこそ、雪輪おねえちゃんらしく言うなら…」
「「かんがえすぎ?」」
そういうと二人でクスっと笑ってしまった。
ちょっとだけ。
怖いなぁって思ったのは、私がシロ様のようになるとか、そういうのじゃなかったんです。
もし私があの時、山伏に為った時、はは様が見た私がシロ様に似ていたから、助けたんじゃないかなって、頭をよぎったんです。
ほら、あの人こそ「かんがえすぎ」なタチだし、どこまで考えてるんだかわからないじゃないですか。
じゃぁ何か、私がシロ様に似てるからっていう理由で、なんだろ、企みっていうか、謀っていうか、考えがあったんじゃないかなって思っちゃうんです。
けどね。
少なくともその理由だけじゃなくて、本当に家族として迎えてくれたんだって、山伏に為ってからの私が、心の中で断言できているんです。
こうやって不安になっちゃうのは、もともと人であった私の名残なんですよ、きっと。若干少女であった「歌野鶴葉」の残滓なんです。
だって、はは様ですよ?
はよ寝ろって言っても聞かないし、気が付くと何か作ってるようなワーカーホリックベアーなのに、普段はグデェってしているあのはは様ですからね?
それを知っているからこそ、私は残滓に言ってやれるんです。そんなこと絶対ないよーって。
「ね!?」
…といわれましても。
ガスマスクの下にある私の顔は、非常に困っていた。
言われていることが全然わからないどころか、なんかもう熱く語ったと思ったら、たまにニヘェっていう顔をする金麦の主。
絡み酒だ。これぜったい絡み酒。しかもいつもよりタチが悪い。
しかもまだ昼だよ。店内だーれもいないよ。私ら二人だけじゃん。
今すぐほかの妖精も呼びたいのに、なぜwhy今日は私だけなのねぇ神様。
そう思いながらも、アイスコーヒーをひたすらすすりながら、山伏が次女の酔い言を聞き流すのに徹した。かえって絵が描きたい。